Candidum – Special Suits.

Candidum の、そして Fuzz の新しい試み。
たいへん本格的な “スーツ” をご用意しました。いろいろとご説明することが多いので、長くなりそうです。また、製品の性質上、店頭販売のみのお話しとなってしまいます。

 

今回ご案内するのは、Candidum が手がける本格仕様のセットアップスーツです。これまでとは違って、上下揃いのスーツです、ということとなります。
あくまで現在の我々の立っている場所においてですが、現実的に最高峰という素材と縫製で仕上げています。つまり、上を見ればきりがない、下を見てもきりがないという中で、トゥーマッチな贅沢ではなく、セレブやマニアでもない、”一般的なファッション愛好家” にとっての現実的に最高レベルというところに照準を合わせています。

こういった線引きというのは意外とシリアスな問題で、完全に価値観の部分になりますが、モノが溢れ、価値観が多様化するなかで、本当の成熟とは何か?ということに繋がり、そこから格好よさとは何か、お洒落とは何か、ひいては幸福とは何か、などといった大テーマにつながっていく大事なことだと思います。しかし、このあたりを語るとまた長くなりますので別の機会に譲るとして、話を進めていきましょう。

 

何枚か写真を見ただけでもモノの良さが伝わるかと思います。
まず仕立ては関東圏内で最高峰の縫製工場の手によるものであり、カジュアルファッションのブランドの服ではなく、高級スーツを専門に縫うようなところです。テーラードジャケット専門の縫製工場もピンきりで、当然値段相応の仕上がりになるのですが、こときちんとしたテーラードジャケットに関して言えば、そのレベルの差が実際の製品に反映されやすいということ。
昨今はわりあいに安価でオーダースーツができるようになりましたが、生地を選んで、サイズを合わせて、でも出来上がったらなぜか少し残念、、ということが度々起こるのは、工賃のコストが削られているというからくりに因ることが多いそうです。つまりスピードと量産を得意とする低価格の工場で縫われていることが多いのです。

そして着てみると、やはり着心地は明確に違います。Candidum の他のいつものジャケットと着比べてみても違いは分かります。もちろん、元々のかたちも違い、”スーツとして映える仕立て” としてつくられていますので、そこも大きいでしょう。

 

生地はイタリアの Loro Piana の Four Seasons というもの。ウールとカシミヤのファブリックを得意とする一流どころの、ベーシックな4シーズン、つまり通年生地厚のファブリックです。

一見して分かる素材からくる上品な光沢があり、ものの良さは誰が見ても分かるレベルです。薄からず厚からずでシーズン性を感じるものではありませんが、実際には夏はきついかな、という感じです。

カラーはネイビーとチャコールの2色でのご用意です。

 

気になるプライスですが、上下揃いで税抜98,000円です。ここまでの説明を聞くと、このくらい高価であることはある程度納得していただけるかと思いますし、この辺を詳しい人はちょっと驚くのではないでしょうか。

そして、こちらは 44、46、48、と3サイズでご用意していますが、あくまで上下セットでの販売となり、ジャケットを44で、パンツを46で、ということは残念ながらできません。
また、写真を見て気付くと思いますが、仕付け糸が付いた状態になっているのですが、ご購入後に袖ボタンの仕様(ボタンの数等)をお好きに決めていただき、パンツの丈詰めと始末までも含めて、1週間から10日程度のお時間をいただいてお渡し、ということになります。ですから今回はパンツの丈合わせまでプライスに含まれます。

そして、ここからが本当のスペシャルと銘打つゆえんです。
実はこのスーツ、サイズの調整を細かく承ることができます。前述の最高峰の工場というのは、一着縫いで仕上げるので、基本的に1着ごとに細かい調整が可能なのです。
具体的にどうするかと言うと、サイズ面でストレスがあった際には、袖丈を何センチ詰める、着丈を何センチ長くする、などといった希望に沿い、新しくその寸法でつくりますということになります。この方法をとる場合、プライスとしては 10,000円のアップチャージがあり、お渡しが2ヶ月後、ということになります。

ジャケットでは肩が合うサイズを着ていただき、袖、着丈、胸囲、ウエスト、どこでも直せます。ベントもサイドベンツの仕様ですが、センターベントに変えることもできます。パンツはヒップまわりが合うサイズをまず穿いていただき、ウエストを絞る、出す、わたりや裾幅を広げる、狭める、といったことができます。もちろん、裾の始末もシングル、ダブルと選んでいただけます。

ただ、あくまでもサイズ調整での仕立て直しで、身体を採寸してのオーダーメイドではないということはご理解ください。フルオーダーをご要望の場合はしかるべきところに行っていただき、やはりブランドさんが示すデザインを楽しんでいただき、エレガントなバランスで設計されたシルエットの素晴らしさを享受していただきたいと思います。そこを基本にした上で、ご自身の身体のサイズに合わせ、サイジングの好みをいい具合に反映させて、というところで考えていただけたらと思います。

フルオーダーというのは、しかるべき経験を積んだ仕立て職人さんが受け持つ世界ですので、僕の守備範囲を越えてしまいます。あくまでもセレクトショップとしての立場では、仕立てのスーツまではいかないところまでで、腕を売るのではなくファッションを売るという観点から、それを求める人に向けて、というところかと考えています。

 

こういうことができて、このプライスで、というのはこの世界では実は驚くべきレベルらしいです。まず、この生地にピンポイントで絞って、メーカーとして反物で仕入れてしまうことが大きいようです。この方法であれば後から入るオーダーがあるであろうということで、生地をストックしておく必要が生じますから。
生地見本から色々と選べます、という方法では、生地をカットして買うために高くつき、結果的に同じこの生地を選んだ場合、分かりやすく全然違ったプライスになるそうです。

それから、Candidum というブランドとして、スーチングもできるブランドであるというアピールをしたいということもあるそうです。このレベルのスーツが世に出ることによって、ブランドの評価を高めたいということで、ひいてはインラインの通常の製品をもっとしっかり評価してもらえるのではないか、ということを狙っているそうです。そういう意味で、ブランドが得る利益の一定分を広告費という考え方にして還元し、世に出る数を増やしたいということです。

 

ということで、長くなりましたが、だいたいの説明ができたかと思います。もちろん、店頭でも詳しくお話しさせていただきます。

昇進して威厳のあるしっかりしたスーツでもいっちょう、とか、大事な商談用の勝負スーツをいっちょう、とか、お年頃で結婚式に呼ばれることが増えそうだから映えるスーツでもいっちょう、とか、いろいろとニーズはあるかと思います。

今この時代、高級なものを身につけているからお洒落とも思われないですし、分不相応はかえって格好悪いと思われたり、いろいろとシビアに見られる世の中になっているかと思います。
そんな中で、その人の社会的地位や、その場所や場面で相応しい格好をしていくために、という観点で、こういったスーツが必要かどうかご一考いただけたらと思います。

そして、こういった服に自然と感じてしまう “ロマン” という部分、これを度外れにではなく、適度に溶けこませて、楽しくご検討いただけたらと思います。