Go Deep.

What is FASHION ?

ファッションって何だろう?
お洒落って何だろう?

普通に生活しているのなら、あえて向き合う必要のない問い。いや、これに向き合いながらお洒落に励むとしたら、実はもうお洒落ではないかもしれない。なぜ、人は着飾るのか、どうして俺は洋服や持ちものにお金をかけるのか、誰にどう見られたいのか、単なる娯楽の一つとして自分独りが満たされるのか、、、

こんな恐ろしい問いに、あなたは向き合うべきではない。

 

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ただ、それを生業としている者としては、立場上、それなりに考えていかなければいけない、けど、考えるのは考えるにしても、語るにはヤマがでかすぎるし、むしろ語ることはタブーなのかもしれないとさえ思う。

個人の心理的な側面、個人と集団という社会的な側面、また、ビジネスとしての側面、、、
すべてを網羅して語り尽くすことは、とうてい無理な話でしょう。

 

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ある時、店頭で長いお付き合いになっているお客さん数名の方に訊きました。
『お洒落とは何ですか?』

これは、『あえて漠然としたかたちで訊きますが』 というフレーズを添えて、きわめてシンプルな問いを個人的に解釈して答えてもらいました。

 

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『お洒落とは何ですか?』

答えその1
それを答えること自体、恥ずかしいですね。お洒落とは、語るもんじゃない、というのがまずある。

答えその2
TPOでしょう。季節や土地、場所や立場を考えて、ふさわしい装いができるか。どんなにいいものを着るかというよりは、どの街で誰と会うからこういう感じに着る、とかを考えるのが楽しいです。

答えその3
僕にとってお洒落とは、”憧れ” かもしれないですね。映画を観たり、街を歩いていたりする時に、格好いいなと思える人を見て、憧れのような感情が湧いた時に、お洒落ごころが自然と発動します。

答えその4
お洒落とは、人が周囲の人に向かって、自分の好みを主張し、なんとかかんとか、、、という行為である、こんな感じっすかね?

答えその5
僕にとっては、すごく特別なことで、大切にしていることです。ただ、どう特別か、どう大切かというのは、ちょっとうまく話せないですね。

答えその6
なんなんでしょうね。

 

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質問には、『誰にとって』 という枕もつけていないですし、『お洒落』 が概念なのか、行為なのかも規定しないですから、受け止め方はそれぞれ。自分のこととして答えてくれたり、どういう人がお洒落なのかを説明したり、一般論として明らかにしようと試みてくれたり。

正解があるものと考えて、それを探すのも面白い。
自分なりの答えをゼロからつくるのも面白い。

 

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好きなものを身に付けることだけでいい、俺にとってのお洒落は、あえてそこまで。だからさ、俺ってお洒落な人ではないんだよね。でもさ、楽しければいいんじゃない?

間違いないものを身に着けたいですね。しかるべき素材で、しかるべき技術でつくられた、確かなクオリティのもの。そういうものを身に付けると、自然と身が引き締まるような気がします。それが僕のお洒落です。

高価なものを身に付けている人がお洒落? 僕は違うと思いますよ。やはりその人らしさが表れていて、他の人には無い魅力を感じさせる人がお洒落なんだと思いますよ。

やっぱりトレンドですね。”今” の空気をしっかり感じられているかどうかが大切です。先端にいる感覚って、とても気持ちがいいものなんです。

お洒落というものを意識しなくなってから、ようやくお洒落になれるのかもしれないね。肩肘張らず、自然な姿が一番格好良くなるのが人間の理想でしょう。

 

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ニューヨークでファッションスナップを何十年も撮り続けたビル・カニンガムはこう言います。

Fashion is the armor to survive the reality of everyday life.
「ファッションは鎧なんだ、日々を生き抜くための。」

 

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例えば、自分のことを弱いと感じているのかもしれない。自分に自信が持てないから、しっかりと着飾って、心を強くしたいと思っているのかもしれない。

例えば、人と話すことが苦手で、自己表現があまり上手くないとしたら、お洒落に傾倒するのかもしれない。自分はこういうものが好きで、こう見られたいんだと、ほとんどの場合が無意識なのだろうけど、バランスをとるように、言葉ではなくファッションで自己表現を実現していくのかもしれない。

例えば、自分には認めてもらえるような魅力がないから、他の人が決してしない格好をしてやろうと考えるのかもしれない。おれはおまえらとは違うんだ、おれはありきたりの人間ではないんだ。

もしかしたら、お洒落とは、弱さを隠すもの?

 

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『若いうちは、もしかしたらそういう側面が強かったかもしれないね。わたしはその時期を通り過ぎて、もはや自分の好きなもの、自分と相性のいいものしか身に着けなくなってしまったのだけど、かえってファッションの奥深さを知ったよ。
わたしたちの年代のお洒落はさ、どんなふうに自らの幸福が染み出すか、みたいなことなんだろうねぇ』

 

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『ファッションとは、お洒落とは』 ということに、正面からまともに向き合うべきではない。なぜなら、お洒落とは、感性を使うものだからだ。
頭を使いすぎたら、五感は鈍る。五感を駆使しないお洒落は、正しさは感じられても、面白さが不足してしまうのではないか。

しかし、面白さが不足するとして、それもまたその人、となるのがファッション。やはりどんなかたちであれ、その人らしさは表れてしまうのかもしれません。

 

汝、恐れるなかれ、
装いを楽しむ先にこそ光明あり。

 

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やはり、語り尽くすことあたわず。語れば語るほどに、混沌を為すばかり。

ですが、我ながら果敢なチャレンジだったと思います。
またいずれ機会があれば…